◆定年後の再雇用に関する解説と注意点
ただし、社員が再雇用を希望している場合には、その意思を尊重することが重要であり、適切なコミュニケーションや配慮を行うべきです。
また、再雇用をする際には労働条件についても適切に提示する必要があります。
将来的には、70歳までの就業機会確保が義務化される可能性もありますので、会社は将来を見据えて対応策を検討し、適切な労働条件を提案することが重要です。
・人事・労務担当者
・定年を迎えた社員や再雇用を希望する人
・労働法や雇用制度に関心のある人
・高齢者の雇用確保や労働市場の動向に関心のある人
法律上の原則では、定年を迎えた社員に対しては再雇用の機会を提供するべきです。
しかし、一部の例外的なケースでは、継続雇用を拒否することができる場合があります。
まず最初に、就業規則を確認する必要があります。
労働基準法においては、就業規則が労働契約に優先して適用されるとされています。
そのため、就業規則に定める解雇や退職事由に該当する場合、雇用の継続は拒否することができます。
例えば、定年に達した社員が業績不振や職務遂行能力の低下などの問題を抱えている場合には、解雇や退職を理由に継続雇用を拒否することができます。
また、特定の業種や職能においては、定年を超えての再雇用が困難な場合もあります。
これは、安全上の理由や業務上の制約が影響している場合があります。
例えば、高所作業や複雑な専門技術を要する職種では、高齢になると身体的な制約や記憶力の低下などが問題となる場合があります。
そのため、労働環境や業務条件を考慮し、再雇用を拒否することができるのです。
ただし、社員が再雇用を希望している場合には、その意思を尊重することが重要です。
定年を迎えた社員が引き続き働くことに積極的な意欲を持っている場合には、可能な限り再雇用の機会を提供することが好ましいでしょう。
また、継続雇用を拒否する場合には、適切なコミュニケーションや配慮を行い、社員の希望や意見を尊重することも重要です。
総じて言えることは、定年を迎えた社員の継続雇用を拒否することは一般的には難しいですが、一部の例外的なケースにおいては可能です。
ただし、就業規則や労働環境、社員の意欲などを総合的に考慮し、公正かつ適切な判断を下すことが求められるでしょう。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正により、事業主は高年齢者の雇用確保のため継続雇用制度を導入することが求められています。
労使協定が2013年4月1日までに締結されていた場合、継続雇用制度の適用範囲に制限を設けることが認められています。
ただし、この制限が2026年3月31日までに適用され、2021年2月時点では再雇用対象者を限定することができるのは63歳以上の労働者です。
高齢者の雇用確保や労働市場の活性化を目指して、再雇用制度が導入された背景には、少子高齢化による労働力の減少や人材不足を解消するための施策が求められています。
また、定年退職後も働き続けることにより、高齢者の知識や経験を有効活用し、企業の成長や競争力の向上を図ることが期待されています。
継続雇用制度を導入する際は、事業主は希望者全員を対象にしなければなりません。
ただし、労使協定が2013年4月1日までに締結されていた場合においては、最長で2026年3月31日までを経過措置として、労使協定で再雇用対象者を限定することが認められています。
この経過措置の期間中は、再雇用対象者は63歳以上の労働者に限定されます。
労使協定による再雇用対象者の限定は、企業の状況やビジネスモデルに応じて柔軟に対応するための措置です。
労使双方の合意のもと、経過措置を活用することにより、労働者が定年退職後に継続して働く機会を得ることができます。
高齢者の雇用確保や労働市場の活性化を目指す再雇用制度は、労働者にとっても長期的な雇用の安定や自己実現の機会を提供するものとなっています。
また、企業にとっても高齢者の知識と経験を活用することで、生産性の向上や競争力の強化につながると期待されています。
経過措置を活用しながら、高齢者雇用の促進を図ることが重要です。
就業規則には、従業員の解雇や退職の際に適用される事由が定められています。
2013年4月1日以降は、再雇用制度の対象者を限定することができなくなりましたが、一部経過措置があるため注意が必要です。
しかし、心身の故障により業務に耐えられない場合や、勤務状況が不良で従業員の責任を果たせない場合など、就業規則に定められた解雇事由や退職事由に該当すれば、再雇用を拒否することが可能です(年齢に関する事由は除きます)。
具体的には、従業員が心身の故障によって業務に耐えられない場合、または長期間休職する必要がある場合、再雇用を拒否することができます。
たとえば、従業員が重度のうつ病や身体の障害を抱えており、業務を遂行することが極めて困難な場合、その従業員を再雇用することは難しいでしょう。
また、勤務状況が不良で、引き続き従業員としての責任を果たせない場合も、再雇用を拒否することができます。
たとえば、従業員が業務態度や能力に問題があり、マナー違反や仕事の遅延、他の従業員とのトラブルを引き起こしている場合、その従業員を再雇用することは適切ではありません。
ただし、年齢に関する事由については再雇用拒否はできません。
つまり、年齢による解雇や退職は、法律で禁止されています。
年齢によって退職せざるを得ないのであれば、再雇用を拒否することはできません。
従業員の解雇や退職は重要な判断であり、就業規則に明記された事由に基づいて行われるべきです。
再雇用制度の対象者を限定することができなくなった現在、就業規則に明確な解雇事由や退職事由を定め、それに基づいて適切に対応することが求められます。
再雇用をする際の労働条件は、法律上の義務は設けられていませんが、厚生労働省は「合理的な裁量の範囲の条件」を提示すれば結果的に再雇用を拒否しても法律違反にはならないとの見解を示しています。
ただし、同一労働同一賃金の視点で考える必要があります。
具体的には、定年後の就業形態をワークシェアリングとし、2人で1人の業務を分担することが提案されています。
この場合、再雇用者の勤務日数や勤務時間を短くすることは問題ありません。
また、2021年4月1日からは70歳までの就業機会確保が会社の努力義務となるため、これに対応するための労働条件も考慮する必要があります。
将来的には、労働力の人口減少や社会情勢の変化を踏まえると、70歳までの就業機会確保が義務化される可能性もあります。
このため、会社は将来を見据えて再雇用に関する対応策を検討し、労働条件を適切に提示する必要があります。
再雇用者との合意に至らない場合でも、法的な問題は生じませんが、雇用者としての責任を果たすためにも、適切な労働条件を提案することが重要です。