◆コストプッシュインフレとは何か?その原因と影響

◆コストプッシュインフレとは何か?その原因と影響

コストプッシュインフレは、コストの高騰によって引き起こされるインフレであり、需要の増加によって引き起こされるディマンドプルインフレとは異なります。原材料費や労働力のコストの上昇が供給制約を生み、物価の上昇をもたらします。コストプッシュインフレはしばしば不況を招き、企業物価指数や輸入物価指数の上昇によって生活に影響を与えます。対策としては利上げ、緊縮財政、投資による供給力拡大がありますが、利上げや緊縮財政は国民の貧困化を招くことがあり、スタグフレーションにつながる可能性があります。

 
この記事はこんな方におすすめ!

・経済に興味がある人
・インフレやデフレについて学びたい人
・コストプッシュインフレについて知りたい人
・コストプッシュインフレがもたらす影響について知りたい人
・対策について知りたい人

コストプッシュインフレとは?

コストプッシュインフレとは、コストの高騰によって引き起こされるインフレのことです。
具体的には、原材料費や労働力のコストの上昇が供給制約を生み、物価の上昇をもたらします。
このインフレの種類は、需要の増加によって引き起こされるディマンドプルインフレとは異なります。
なお、コストプッシュインフレはしばしば「悪いインフレ」とも呼ばれます。

 

コストプッシュインフレの原因

コストプッシュインフレの主な原因は、コストの高騰です。
例えば、現在の日本において、石油価格の上昇が主な要因となっています。
更に、新型コロナウイルスの流行によってサプライチェーンが止まり、供給が制約されたことも問題になりました。
ただし、これは厳密にはコストプッシュインフレではなく、コロナウイルス後の需要増加が一因となっていると言えます。
なお、日本と世界の経済状況では、インフレの幅や影響度は国によって異なります。

 

コストプッシュインフレの影響

2021年10月にアメリカの労働省が発表した統計によれば、消費者物価指数(CPI)は6.2%上昇しました。同じくイギリスでも同月のCPIは4.2%で、過去10年で最も急激な伸びを示しました。ドイツでは11月の速報値で5.2%、フランスでは同月のCPIが2.8%上昇しました。

 

一方、日本のCPIは11月に0.5%上昇し、比較的落ち着いた動きを見せました。しかしながら、企業物価指数は前年比で驚異的な9%も上昇しています。特に注目すべきは輸入物価指数であり、前年比で44.3%も上昇しています。企業物価指数は、企業間での取引に焦点を当てた指数です。日本では不思議なことに、デフレの状態にもかかわらず、企業がコストを価格に転嫁できずにコストプッシュインフレが発生しているといえます。

 

コストプッシュインフレによる影響と生活への影響

コストプッシュインフレによる影響は、生活にどのような変化をもたらすのでしょうか? コストプッシュインフレは原材料費の高騰が主な要因であり、それにより企業の利益が減少します。
利益の減少により、企業はコストカットに取り組むこととなります。
コストカットによって、人件費の削減が行われる可能性が高くなります。
そうなると、失業率が上昇する可能性も高まります。
このように、コストプッシュインフレはしばしば不況を招くこともあります。
また、原油価格の高騰が続く場合は、生活に困窮する人々が増える可能性も高いです。


コストプッシュインフレに対する対策

コストプッシュインフレに対する対策は3つあります。
利上げ、緊縮財政、投資による供給力拡大です。
しかし、利上げや緊縮財政はいずれも適切な選択肢ではありません。
その理由をわかりやすく解説いたします。

 

利上げ

コストプッシュインフレに対する対策の1つは利上げです。
日銀は長期金利を操作することで、経済に介入することができます。
長期金利を引き上げることで、資金需要が減少し、需要縮小につながります。
コストプッシュインフレは需要が供給を上回る状態ですので、需要を抑制することでインフレを抑制することが可能です。

 

需要減少は理論的にはコストプッシュインフレを抑制する効果があります。
しかし、需要減少は国民の貧困化を意味します。
国民を貧困化させてコストプッシュインフレを解消するのは本末転倒です。
利上げはコストプッシュインフレ解消の選択肢としては適切ではありません。

 

緊縮財政

緊縮財政も利上げと同様に、需要を縮小させる効果があります。
しかし、需要の減少は再び国民の貧困化を招くことになります。
実際、円安を理由に利上げを主張する一部の専門家やエコノミストもいますが、彼らの主張する通り、円高になればコストプッシュインフレを相殺することができるかもしれません。
しかし、同時に国内景気を冷やして国民生活を圧迫することとなります。
ですから、緊縮財政もコストプッシュインフレに対する選択肢としては適切ではありません。


コストプッシュインフレとスタグフレーション

コストプッシュインフレが進行すると、通常はスタグフレーションと呼ばれる状態になります。
スタグフレーションとは、インフレと不況が同時に起こる状態を指します。
具体的には、失業率の増加や賃金の停滞といった不況の状況と、物価の上昇が同時に起こる現象です。
スタグフレーションは、デフレよりも一般の人々を苦しめるものです。

 

コストプッシュインフレは、スタグフレーションに発展しやすい現象であります。
コストの高騰によって企業の利益が圧迫されるため、企業は価格上昇を試みることになります。
そして、この価格上昇によってインフレーションが進行します。

 

一方、利益の圧迫は企業にコスト削減のインセンティブを与えます。
そのため、人件費の削減によるリストラクチャリングや所得の減少などが引き起こされるでしょう。
このようにして、コストプッシュインフレはスタグフレーションへとつながるのです。