◆社会保険?労働保険?社会保険の5つ種類と分類について

◆社会保険?労働保険?社会保険の5つ種類と分類について

新しい労働者を雇用したときに必要となるのが社会保険の資格取得の手続きです。ひとえに「社会保険」と言ってもいくつかの種類があり、各々で役割が違ったり、管轄が違ったりします。ここではその社会保険についての解説をしていきます。

 
この記事はこんな方におすすめ!

・企業の経営者や管理職
・従業員の雇用や労働条件に関わる人事担当者
・労働法や社会保険について知りたい一般の方
・新たに就職する予定の人や労働に関心のある人

社会保険とは(広義と狭義)

ひとえに「社会保険」と言ってもその社会保険には広義と狭義が存在します。
人によってはこの「社会保険」を広義の意味で使う人と狭義の意味で使用する人がいますので注意が必要です。具体的に広義と狭義を見てみると下記のようになります。

 

社会保険(広義)

「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」

 

社会保険(狭義)

「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」

 

上記からもわかるように、広義と狭義の違いは「雇用保険」と「労災保険」が含まれるか否かになります。

 

ちなみに「雇用保険」と「労災保険」については「労働保険」と呼ばれます。


社会保険(狭義)について

前述の通り、狭義での社会保険は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つの事を指しています。では各々にどのような特徴があるかを解説します。

 

健康保険とは

健康保険とは主に怪我や病気、出産や死亡に対してかかる費用の一部が負担されたり、支給される保証制度になります。

 

社会保険の加入について

【事業所の加入(適応事業所について)】
法人は基本的には社会保険に加入しなければならず、「事業所(本社、支社、工場など)の単位で加入となります。この社会保険適応対象の事業所を「適応事業所」といい、適応事業所になった5日以内に管轄の年金事務所または健康保険組合へ届け出なければなりません。
【従業員の加入条件】
上記の適応事業所で常時使用されている人で、75歳未満の方が被保険者となります。

 

尚、社会保険の加入者対象者は下記の通りです。

  • 法人の代表者
  • 会社役員
  • 正社員
  • 試用期間中の従業員
  • アルバイト・パート(条件有)
  • 外国人従業員

 

上記の中でアルバイト・パートに関しては社会保険に加入するために条件があります。
〇1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上の人
〇上記、正社員の4分の3未満であっても、(1)~(5)の条件をすべて満たす人
(1)週の所定労働時間が20時間以上
(2)勤務期間が2ヵ月以上見込まれる
(3)月額賃金8.8万円以上
(4)学生以外
(5)従業員数101人以上の企業に勤務していること(※)
※2024年10月からは「従業員数51人以上の企業」に拡大される予定です。

 

厚生年金保険

厚生年金とは、通常の国民年金に対して上乗せされて給付される年金です。
基礎年金となっている国民年金の金額に厚生年金保険の受給額が加算されて受給することになります。
原則65歳になると国民年金と併せて老齢厚生年金として給付されます。

 

介護保険

介護保険とは、介護が必要な人に対して、介護や介護予防の費用の一部を給付する制度になります。この介護保険については40歳以上の人に加入義務があります。
尚、64歳までは健康保険料と一緒に徴収されますが、65歳以上になると年金受給額が18万円以上の場合は特別徴収(年金からの天引き)18万円未満の場合には普通徴収(口座振替、役所・コンビニなどでの支払い)になります。


労働保険について

労働保険とは「雇用保険」と「労災保険(労働者災害補償保険)」を合わせた総称になります。
この2つの保険の違いについてですが、雇用保険は主に労働者の生活の保護と再就職促進を目的としたもので、労災保険は労働災害によって傷病を負った労働者の保護を目的としています。
また、雇用保険は、その保険料を事業主と労働者が負担するのに対して、労災保険は全額事業主負担になっているというのも大きな違いの一つでしょう。

 

ではこの2種類の保険がどのような役割があるかをご説明します。

 

雇用保険とは

労働者が失業して収入がなくなったり、倒産などの会社都合により雇用継続ができなくなった場合などに、労働者に給付等を行う事で生活や雇用の安定を図り、労働者の再就職を促進することを目的とした保険になります。
雇用保険の主な内容は下記の通りになります。

 

基本手当

雇用保険の中でも代表的な物は「基本手当」です。これは一般的には「失業手当」と呼ばれており、労働者が失業した際に生活の心配を軽減させ、1日でも早く再就職ができるようにするための給付になります。

 

この基本手当は退職の理由や雇用保険の被保険者期間によって決まります。
自己都合で退職した場合には90日から360日の範囲で決まり、会社都合(会社の倒産や解雇など)の場合には給付日数や支給までの期間が自己都合の場合より優遇されています。

 

給付を受けるためには単に失業している状態というわけではなく、再就職する意思と能力がある事が必要で、給付額は月給額の概ね45%~80%ほどになります。

 

就職促進給付

就職促進給付とは、できるだけ早く再就職することを目的とした給付金で、基本手当受給中に就職が決まった場合、一定の条件を満たすことで支給を受ける事ができます。

 

再就職手当:正社員で働くときにもらえる手当です。
就業促進定着手当:再就職先で6か月以上継続して働いているが、以前の就職先よりも賃金が低い場合にもらえます。
就業手当:失業手当の受給者がパートやアルバイトで働くともらえる手当です。
常用就職支度手当:45歳以上の方や身体障害者などが、1年以上の雇用が見込まれる職業に就いたときにもらえる手当です。

 

教育訓練給付

教育訓練給付とは、教就職に向けての教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される制度です。再就職に向けて資格取得を考えている場合には有益な制度になります。

 

雇用継続給付

高齢者、育児休業、介護休業などの理由により働けなくなる場合に支給される手当です。

 

労災保険

労働保険とは、労働者が業務中(通勤時を含む)の事故や病気によって負傷したり、亡くなってしまった場合などに、労働者もしくはその遺族を保護する事を目的とした保険の事になります。労災保険の主な内容は下記の通りです。

 

療養給付

療養給付とは労働者が労働災害によって負傷をしたときに、自己負担なく治療を行える制度です。

 

休業給付

労働災害によって就業が困難で療養が必要となり賃金を受けられなくなった場合に、受けられる給付になります。
給付基礎日額(直近3か月の賃金の総額をその期間の総日数で割った金額)の60%相当額の支給が受けられ、さらに給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されるので、合計80%の収入が補償されることとなります。

 

障害給付

障害給付とは、労働災害によって後遺症が生じた場合に年金または一時金を受けられる制度になります。

 

遺族給付

遺族給付とは労働災害によって労働者がなくなった際に、その労働者の収入で生計を維持していた遺族に対して支給されるものです。

 

傷病年金

傷病年金とは、労働災害によって負った傷病の治療が1年6か月を経過しても治癒しない際に支給されます。

 

介護給付

介護給付とは、傷病年金または障害年金受給権を持つ労働者が、介護を受けている場合には、介護給付が支給されます。


まとめ

社会保険には、広義的な意味と狭義的な意味があります。広義には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険が含まれ、狭義には、雇用保険と労災保険を除いた3つが含まれます。社会保険には、適応事業所で常時使用される方々で、75歳未満の被保険者が対象となります。加入者対象者には、法人の代表者、会社役員、正社員、試用期間中の従業員、アルバイト・パート、外国人従業員が含まれます。

 

社会保険に加入することの重要性は、何よりも安心感です。健康保険に加入していれば、病気やケガ、出産に関する医療費が安心して支払えます。厚生年金保険に加入していれば、年金がもらえるだけでなく、老後の生活に必要な資金を貯めることができます。介護保険に加入していれば、介護が必要になった場合に、介護サービスを安心して受けることができます。雇用保険に加入していれば、失業した場合に失業手当を受けることができます。労災保険に加入していれば、職場でケガをした場合や、職業病にかかった場合に、適切な給付を受けることができます。

 

また、社会保険に加入することで、社会的な信頼度が高まります。社会保険に加入していることは、企業や個人にとって、信頼性を示すことができます。加入者は、将来にわたって長期的な経済的な安定を手に入れることができ、社会的な信頼度を維持することができます。さらに、社会保険に加入することは、企業や個人の社会的責任を果たすことができるという意味もあります。