・コアコンピタンスやコアコンピタンス経営に興味がある人
・自社の強みを洗い出したい人
・SWOT分析やPPM分析を活用したい人
・イノベーションを起こすことが重要だと考える人
コアコンピタンスとは、企業の競合他社に真似されない、最も重要な能力のことを指します。
コンピタンスとは「能力」「力量」「適性」を意味する言葉であり、企業が持つコンピタンスのうち、特に核となるものをコアコンピタンスと呼ぶのです。
この考え方は、著名な経営学者ゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードが1990年に発表した論文によって提唱され、その後アップデートが加えられ、『コア・コンピタンス経営』として書籍化されました。
コアコンピタンス経営においては、特に製造業においては、競合他社に真似されない技術力を有することが、企業にとって優れた市場地位をもたらし、顧客にも大きなメリットを提供することができます。
コアコンピタンス経営では、単に現在の状況に反応するだけでなく、自社が事業領域とする業界の未来を見越し、将来の成長戦略を考えることが重要です。
コアコンピタンス経営を実現するためには、次の3つの条件を満たすことが必要です。
1. 顧客に利益をもたらす能力
顧客に利益をもたらす能力とは、製品やサービスによって顧客が抱えている問題を解決する能力です。企業が追求する自社の利益だけではなく、提供する製品やサービスが顧客にとっても利益をもたらすことを目指すことを指します。
自社が他社よりも優れた能力や強みを持っていても、それが顧客にとって利益にならなければ、自社の利益には繋がらないことがあるのです。
2. 他社から模倣されにくい能力
他社から模倣されにくい能力とは、独自の技術や専門知識などで、競合他社に真似されにくい能力のことを指します。自社が提供する製品やサービスに他社が簡単に真似できない技術やノウハウを持つことが重要です。
競合他社は自社の情報を盗み見たり、自社に応用できるかどうかを研究することがあるので、容易に真似できるようなものであれば、技術は自社の武器にはならず、つまらないことになります。
特に、競合他社が多数存在する分野では、真似されない能力を持っていることが必要です。
3. 複数の商品や分野に応用できる能力
複数の商品や分野に応用できる能力とは、企業が持つ技術や専門知識を、異なる分野や商品に応用したり、複数の商品ラインに共通して使用できることを指します。
自社が持つ技術やノウハウがひとつの製品や分野に限定されず、多数の製品や分野で応用できることを指します。
もし、ある特定な製品や分野での需要がなくなった場合、自社の武器であるコアコンピタンスもその能力を発揮する場を失ってしまうことがあるので、技術が多数の製品や分野に応用できるものであることが大切です。
以上のように、コアコンピタンスとは企業にとって最も重要な能力のことであり、コアコンピタンス経営を実現するためには、顧客に利益をもたらす能力、他社から模倣されにくい能力、複数の商品や分野に応用できる能力を持つことが必要です。
コアコンピタンスとケイパビリティの違いとは、コアコンピタンスが競合他社に真似されない核となる能力であるのに対して、ケイパビリティは企業が得意とする組織的能力や強みを指します。
ケイパビリティは1992年にボストン・コンサルティング・グループのストークス、エバンス、シュルマンの3人による論文で発表されました。
ただし、企業が持つコアコンピタンスやケイパビリティは、どちらも企業の 競争力を高めるための重要な経営戦略の考え方として観察されることがあります。
コアコンピタンスとは、企業が持っている特定の技術力や製造能力を指します。
一方、ケイパビリティとは、より上位の視点でとらえた「企業として持っている能力」を指します。
その場合、ビジネスプロセスを指す点で違いがあります。
しかしながら、コアコンピタンスもケイパビリティも、企業の競争優位を保つためには発揮すべき重要な能力と言えます。
一般的に、企業は他社に対して何らかの強みを持っているとされていますが、その強みを把握していない企業も多く存在します。
また、既存のコアコンピタンスが他社と似通っていたり、類似した技術力を持っている場合、コアコンピタンス経営は成り立たないでしょう。
そこで、自社の「核となる能力」がコアコンピタンスとしてふさわしいかどうかを判断する基準が必要になります。
ゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードは共著書『コア・コンピタンス経営』の中で、自社のコアコンピタンスを見極める際、以下の5つの視点を挙げています。
1. 模範可能性(Imitability):自社の能力や技術力が他社に簡単に真似できる可能性が低いかどうかを判断します。
2. 移動可能性(Transferability):自社の能力や技術力が特定の製品やサービスだけに通用するのか、他の分野にも応用可能なのかを判断します。
3. リソース性(Resource Durability):自社の能力や技術力が将来にわたって持続的に利用可能であるかどうかを判断します。
4. 顧客ニーズ(Customer Needs):自社の能力や技術力が、顧客が求める価値やニーズに合致しているかどうかを判断します。
5. 組織的一貫性(Organizational Alignment):自社の能力や技術力が、企業のビジョンや戦略と一致しているかどうかを判断します。
以上のように、コアコンピタンスを見極めるためには、模範可能性、移動可能性、リソース性、顧客ニーズ、そして組織的一貫性の5つの視点を用いて判断する必要があります。
ビジネスにおいて、競合他社と差をつけて優位なポジションを築くためには、コアコンピタンスに注目することが重要です。
コアコンピタンスは、自社が持つ優れた技術や能力であり、それがビジネス成長に大きく寄与すると言われています。
特に、コアコンピタンスに応用性や汎用性がある場合は、ビジネスチャンスが広がります。
ただし、コアコンピタンスであるためには、代替可能性がなく、希少で耐久性がある唯一無二のものであることが求められます。
代替可能性に関しては、他社の製品やサービスに簡単に置き換えられてしまう場合、コアコンピタンスとは認められません。
したがって、技術や能力がオンリーワンであり、代替がきかない場合、市場で独占的なポジションを占めることが可能になります。
希少性に関しては、自社の技術や能力が珍しいことが重要で、市場にあまり出回っていないものである場合があります。
希少性があると、市場で注目され、需要が高まることが期待できます。
耐久性に関しては、長期的に他社に追随されないように優位性を維持する能力が必要です。
しかし、技術の進歩や市場の変化が激しい現代では、耐久性を維持しながらビジネス成長することは難しい課題です。
そこで、常にイノベーションを起こすことが重要であり、ものづくり企業にとっては欠かせない姿勢と言えます。
以上を踏まえると、自社のコアコンピタンスを見極めるためには、まず自社の強みを洗い出すことが必要です。
自社の強みを洗い出すには、自社の強みを思いつくままに抽出するブレーンストーミングが効果的です。
コアコンピタンスが見つかった場合は、外部環境の変化に対応するために、常に改善やアップデートを行い、耐久性を維持することが大切です。
能力や技術だけでなく、人材や企業文化などの視点も考慮することが重要です。
経営者だけでなく、社員全員が参加して新しい気づきを得ることができる可能性があります。
また、マーケティング分析で用いるSWOT (スウォット)分析やPPM分析という手法も活用できます。
SWOT分析は、自社の内部要因(強みと弱み)と、自社をとりまく外部要因(機会と脅威)を照らし合わせることで企業や事業の現状を把握します。
PPM分析は、自社の製品やサービスを市場の成長率、占有率という視点で自社がどのポジションにあるかを客観的に分析します。
自社の強みを評価するにあたっては、コアコンピタンスの3つの条件に照らし合わせて行います。
まず、顧客に利益をもたらすことができるか、他社から模倣されにくいか、複数の商品や分野に応用できるかについて考えます。
洗い出した強みに対し、この3つを判定の基準にして点数をつけ、リスト化します。
点数をつけることで、コアコンピタンスとしてのレベルが確認でき、点数が高い強みが、自社のコアコンピタンスとなる可能性が高いという評価となります。
自社の強みの絞り込みを行うためには、コアコンピタンスとなる可能性が高い強みをさらに絞り込みます。
具体的には、模倣される可能性が低いか、他の分野の製品や事業領域などにも応用できるか、どのような顧客や顧客層にメリットを提供するか、将来にわたってコアコンピタンスとして維持、成長させることができるかという項目を当てはめて考えます。
コアコンピタンスの絞り込みは、最終的には経営判断になります。
コアコンピタンスを将来にわたって維持、成長させることが、コアコンピタンス経営を支えます。
自社の強みを明確にすることで、市場での競争優位を得るための武器を手にすることができるはずです。
コアコンピタンスとは、自社の強みのことであり、真似できない他者との差別化につながります。
自社のコアコンピタンスを見つけるには、5つの視点と3ステップが有効です。
5つの視点とは、模倣可能性、移動可能性、代替可能性、希少性、そして耐久性のことです。
3つのステップとは、自社の強みを洗い出し、評価し、明確化することです。
中小企業の強みとしては、経営層の意思決定が迅速であり、少ない従業員数でも小回りのきくフットワークがあげられます。
これらの強みを活かし、コアコンピタンス経営を実践すれば、競争優位を確保し、グローバルニッチトップ企業として成功することができます。